都会の声

"看護師"というよりも利用者さまの"家族の一員"として一人ひとりの心に寄り添うケアを目指したい

訪問看護ステーション 主任 阪下さん

阪下さんは看護師歴20年。

総合病院勤務の看護師として多くのキャリアを積んだあと、出産を経て、現在の訪問看護の職につかれました。

「家で過ごす利用者さまが、私たち訪問看護に求めていることはなにか。」

病院勤務時代には見えてこなかった気づき、そして今のやりがいについてお聞きしました。

“医療関係者と患者”ではなく、“人と人”としての付き合いを大切に

ー 病院勤務から訪問看護の世界へ。新たなフィールドに戸惑いはありましたか?

病院勤務の時とは違うことも多く、初めは不安もありました。訪問看護というのは利用者さまの生活を支え、豊かな気持ちで日々を過ごせるようお手伝いをするのが仕事です。看護だけではなく、時には朝食の用意をしたり、代わりに買い物に行ったり、ご家族の相談に寄り添ったりと、その内容は多岐に渡ります。

そんな中で、利用者さまは“看護師としての私”ではなく、“ひとりの人間としての私”を見ているんだと感じました。目線の合わせ方や、ちょっとした声かけ、所作の一つひとつ。まるっと含めて、私のことを知ろうとしてくださっていると。

ー まさに人間力が試されている感じがしますね。

そうですね。なのでその分、難しさもあります。でも私はそうやって利用者さまが“医療関係者と患者”ではなく、“人と人”としての付き合いを求めてくださることがとても嬉しくて、この仕事のやりがいにつながっています。そして同時に「この方はなにが好きなんだろう? 今どういう気持ちなんだろう?」と、利用者さまの気持ちを知りたい! と自然に思うようになりました。

ー 気持ちをどこまで共有したいと思われるかも、利用者さまにとってさまざまですよね。

その通りです。生活に寄り添うといっても、プライバシーにどんどん踏み込めば良いというものでもありません。自分の生活の中に他人が入って欲しいと思う方もいれば、不快に思われる方もいます。心を開いてくださるのにかなり年数がかかる方もいれば、ある状態の変化をきっかけに受け入れてくださる場合も。それに対しては、こうすればいいという統一のルールや方法はなく、正直、日々の積み重ねしかないと思っています。

あとは自分だけで考えないこと。都会には認定看護師など専門知識を持つ経験豊富な先輩が多いので、いろいろと相談したり、教えていただくことも多いです。

“家族の一員”のような存在が理想

ー これまで利用者さまと接してこられた中で、うれしかったことはありますか?

なにより「またきてや」と言ってもらえることが、一番ありがたいですね。利用者さまにとって心を許せる存在、“家族の一員”のような存在になりたいと常々思っているので、自分がそこに近づけているのかな〜と実感できる言葉です。

あとは、小児の利用者さまのお家に行かせてもらうことも多くって。以前に伺ってから一年経った時に、ここまで成長しましたよ〜! というお手紙をもらった時はじーんときました。たくましく生きている姿に、こちらが元気をもらいましたね。

小児の利用者さまのケースで記憶に残っているのが、入院生活から自宅医療に切り替えることになった小児の子がいまして、呼吸器もつけたままの状態でしたので、また救急で運ばれる懸念があったんです。高齢者の方の場合ですと、ケアマネージャーさんが各所に救急時の手配をしてくださるのですが、小児にはそのような役割を担う方が社会にいないのが現状です。

なので、私が保健師さんを巻き込んでいかないといけない! と、直接消防署に電話させてもらったんです。すると後日、救急隊員の方がご自宅まで来てくださって。どこに車を止められるか、呼吸器はなにがついてるか、エレベーターはどの担架なら入りそうか、実際に細かくシミュレーションしてくださったんです。地域全体でその子を支え、育てていこうという気持ちが伝わったんだ! と強く感動しました。

私たちとの出会いで、人生の幸せな時間を増やしてもらいたい

ー 最後に、これからの目標をお聞かせください。

病気をわずらうという不安や苦悩がある中で、利用者さまと私たちが出会い、お手伝いや話をする機会をもらえたのには意味があると思っています。病気を抱えていらっしゃるので、もちろんシビアな側面もあります。すべての苦しみを取り除くことはできないかもしれません。それでも、私が関わることで幸せな時間が少しでも増えたら、出会えて良かったと思ってもらえたら、これほどうれしいことはないと思っています。